融点
戦は今日も武田の勝利に終わった。
勝ち戦の喜びに沸く本陣内。
佐助は帰陣する主を出迎えようと、人々とは少し離れて一人待っていた。
やがて、忍の鍛えられた目が一騎、赤い武者の姿を捉え、佐助はその俊足で駆け寄って行った。
「お疲れ様、旦那」
「佐助か」
跨った栗毛の愛馬を並足で緩やかに歩ませながら、幸村は、常よりも幾分細められた目で己の部下を見た。
(あーらら、目が据わっちゃってこの人は。相変わらず戦になると別人だね、これ)
今回も大将首を討ち取ったのは幸村だった。
返り血を浴び、頬に飛んだ赤い雫が、似合いの化粧のように妖しく美しく見える。
(眼福と言うか、目に毒と言うか)
「…さ、行こうか。大将が首をながーくして待ってるよ」
手綱を取って引いてやりながら、都合よく佐助は幸村から顔を背けた。
「ちょ、旦那…!」
どさり。
自室に帰るなり強かに押し倒された佐助は、面食らって己に跨る主を見上げた。
幸村はやはり常よりも艶やかな目で、押し返そうと暴れる佐助の両手を掴み床に縫い付け。
「うるさい。戦の熱が冷めぬ、抱け」
妖艶に吊り上がる柳眉を目の当たりのして、佐助の全ての動きが止まった。
見開かれた目はやがて鋭く細められ、低く呻くような声が漏れる。
「あのね、人が苦労して抑えてるってのに、それはないでしょ。…知らないよ、どうなっても」
一瞬で体を入れ替えて幸村を押さえつけ、衝動のまま噛み付くように口付けた。
途端香る鉄の香り、口内を暴れる舌は血の味を感じ取る。
戦装束もそのままに、溶け合い綻ぶ熱と熱。
唇を離せば、二人を繋ぐ銀糸。
ふと、鮮やかな化粧が佐助の目に入る。
「お似合いだから、ちょっと惜しい気もするけど」
あんたに接してるってだけで妬けちゃうからね、と、幸村の頬の赤を舐め取った。
口付けではまだ足りぬと言わんばかりの顔を見下ろして。
「誘った方が、悪いんだからね」
太陽はまだ、沈みそうにない。
置手紙
やっちゃった!幸村誘い受け!
普段はどこか抜けてるけど、こと戦になると別人に変わる二重人格幸村が好きです。
壱川様、よろしければお納めください!(返品可)
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